《その3》ということで、前回では【 特許公報 】の読み方をお伝えしましたが、今回は特許の権利範囲が記載されている【 特許請求の範囲 】の読み方をお伝えします。
特許請求の範囲とは
実際に発行されている特許公報を基に説明すると、分かりづらいので、例として「椅子」で説明します。
この例では、特許性はありませんが、特許請求の範囲とは?に対して分かりやすいかと思います。
肝となる発明ですが、【 椅子の脚に“キャスターを付けた”ことが特徴 】とする椅子とします。
従来は、座りながら椅子の移動がしづらかったとしましょう。
独立項となる請求項1は下記の通りとします。
【請求項1】
座部と、
背もたれと、
脚部と、を備え、
脚部は座部の裏面に接続され、下方端部に
キャスターを設けたことを特徴とする椅子
では、独立項について説明します。
例示されている椅子の場合、「座部」「背もたれ」「脚部」「キャスター」が記載されています。
権利として主張したい範囲を文章で表す必要があります。今回は、これらの要素で構成されていることが特許の権利範囲として主張しています。
特に、『従来は、座りながら椅子の移動し難かった』という課題に対し、今回の例では、『キャスターを設けた』としています。この課題解決した特徴部分が、発明の肝となっています。
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続いて、従属項について説明します。
【請求項2】
脚部は複数に分岐する分岐部を有し、
分岐部の端部にキャスターが設けられる、
ことを特徴とする請求項1記載の椅子
従属項は、独立項の従属関係にあるものです
特許の権利範囲として、従属項は独立項よりも狭まるイメージです。
権利範囲が狭まるのに、なぜ従属項を記載するのか。
従属項を設ける理由はいくつかあります
- 発明のポイントをより明確にする
- 権利範囲をより具体的にする
- 独立項の権利範囲が認められなかったときの保険
独立項と従属項の関係
文章だけでは分かりづらいので、イメージを作りました。
請求項1に記載されている権利範囲が一番広く、請求項2に記載されている権利範囲は請求項1の範囲内にあります。
権利侵害の検討の仕方
例示した特許請求の範囲に対し、何がOKで、何がNGか侵害例をご説明します
A社の場合、例示した発明の各構成要素+肘置きをつけてます。
一方、B社の場合は、例示した発明の背もたれを抜いています。
製品としては、A社の方が機能アップしているので、B社より優れていると見えるかもしれません。(説明の便宜上、コストなどは考慮しません。)
ですが、特許に侵害するかは、特許請求の範囲に記載されている構成要素が全部含まるか否かです。
B社は構成要素の1つを抜いていますので、華麗に他社特許を回避して製品化している例となります。
特許請求の範囲はよく読む
特許公報の特許請求の範囲と、自社製品をよく対比することがとても大事です。
特許請求の範囲が
「A + B + C」の構成要素となっていたら、
自社製品が
「A + B + D」など1つでも違いがあればOKです。
本章の締め
今回の説明では、特許請求の範囲の例が簡易でしたので、イメージはしやすかったと思います。
ですが、実際は、いろいろな構成要素が記載されており、白黒はっきりする特許は少ないかもしれないです。
他社の権利範囲と自社の製品との対比で迷ったら。弁理士がいる特許事務所に相談することを強くお勧めします。
次回からまた戻って、特許出願に向けて何をしたらよいか
お伝えにします 。
以上
今回の資料は、下記からダウンロードできます。